一般社団法人設立のメリット・デメリットを非営利法人の専門家がわかりやすく解説!
この記事の要点
- ◯ 設立コストは約11万円(株式会社の約半額)
- ◯ 最低2名から設立可能(NPO法人は10名以上必要)
- ◯ 事業内容の制約なし(株式会社と同様に自由に設計)
- ◯ 非営利型なら収益事業以外は非課税
- △ 利益を社員に分配できない/役員任期2年で再任登記が必要
行政書士法人MOYORIC|設立実績150法人以上・相談件数300件超
当記事をご覧いただきありがとうございます。
さっそくですが、皆様は一般社団法人という法人格をご存知でしょうか。
こちらのページに辿り着かれたということは、一般社団法人という名前は聞いたことはあるけれど、具体的にどのような特徴を持った法人なのかが分からない。
あるいは、自分がこれから行おうとしている事業について、数ある法人格の中からどの法人格を選べば良いか分からない。という方が大半だと思います。
そこで、当ページでは、これらの疑問にお答えすべく、一般社団法人を設立することによって得られるメリット・デメリットを、株式会社やNPO法人との相違点なども交えながら解説していきますので、ぜひ参考にして頂ければと思います。
行政書士社労士
津田 拓也
※そもそも一般社団法人とはどのような性質を持った法人なのかを1から知りたいという方は、まずは下記ページをお読みいただくと、更に理解が深まるか思います。
*参考ページ:一般社団法人とは?
それでは、どうぞご覧くださいませ。
まずはデータを見てみましょう。一般社団法人の設立数
近年、非営利法人の代表格であるNPO法人と肩を並べる形で注目を集めている一般社団法人。
新公益法人制度がはじまってから10年以上が経過し、今では年間約6,000もの一般社団法人が設立されています(法務省統計)。
新設の法人格では、株式会社、合同会社に次ぐ3番目に位置しています(東京商工リサーチ調べ)。
このように、数字で見ても、株式会社や合同会社、NPO法人など数ある法人格の中から、あえて一般社団法人を選択して事業をはじめる方が増えてきているということがお分かりになると思います。
そもそも、株式会社や合同会社に代表される「営利法人」と、一般社団法人やNPO法人に代表される「非営利法人」の違いとは何なのでしょうか?
その違いはたったひとつ。
余剰利益を分配するか、しないかです。
この一点によってのみ「営利法人」と「非営利法人」は区別されているだけですから、もし、利益を上げることのみを目的とする場合であれば、株式会社や合同会社という選択肢も考えられます。
また、事業内容によっては、一般社団法人よりもNPO法人の方が適しているケースもあるでしょう。
では、なぜ一般社団法人を選択する方が増えてきているのでしょうか。
他の法人格にはない一般社団法人特有のメリットも数多く存在しているからです。それでは、一般社団法人のメリットを具体的に見ていきましょう。
一般社団法人と他の法人格との比較表
一般社団法人の特徴をより具体的にイメージしていただけるよう、株式会社・合同会社・NPO法人と主要項目を比較した表をご用意しました。
| 項目 | 一般社団法人 | 株式会社 | 合同会社 | NPO法人 |
|---|---|---|---|---|
| 設立に必要な人数 | 社員2名+理事1名 (兼任可で実質2名) |
1名 | 1名 | 10名以上 |
| 設立の法定費用 | 約11万円 | 約24万円 | 約10万円 | 0円 |
| 設立にかかる期間 | 約3〜4週間 | 約2〜3週間 | 約2週間 | 約4〜6か月 |
| 認可・認証の要否 | 不要(登記のみ) | 不要 | 不要 | 必要(所轄庁の認証) |
| 資本金 | 不要 | 1円以上 | 1円以上 | 不要 |
| 事業内容の制約 | 原則なし | 原則なし | 原則なし | 20分野に限定 |
| 利益の社員・株主等への分配 | 不可 | 可 | 可 | 不可 |
| 税制(非営利型) | 収益事業のみ課税 | 全所得課税 | 全所得課税 | 収益事業のみ課税 |
| 役員任期 | 理事2年・監事4年 | 最長10年 | 任期なし | 2年 |
| 行政の監督 | なし | なし | なし | 所轄庁の監督あり |
※費用・期間は標準的な目安です。専門家への依頼料は別途。NPO法人の20分野は特定非営利活動促進法第2条別表に定められた活動分野を指します。
一般社団法人のメリット
メリット1.登記申請のみで設立ができる
以前は、社団法人(旧民法や特別法によって設立されていた法人)を設立するには都道府県等による認可が必要でした。
認可を受けるには厳しい要件をクリアしなければならず、その要件や審査の内容も都道府県によって差異があり、基準が明確ではありませんでした。
ですが、現在は、都道府県等からの認可は必要ではなく、法務局への登記手続きのみで一般社団法人の設立が可能となりました。
一般社団法人は許認可制を取っていないため、株式会社と同じようにスピーディーに設立することができます。また、資本金制度もありませんので、資本金の払込手続きといった作業も不要ですから、株式会社よりも設立手続きは簡素化されています。
NPO法人については、設立するには行政庁の認証が必要であり、登記だけでは設立できません。
事業計画書や活動予算書など膨大な書類を作成・準備する必要もあります。
NPO法人の設立には約半年ほどかかりますので、一般社団法人と比べるとかなり時間がかかります。
メリット2.小規模であっても設立できる
一般社団法人は、少人数で設立が可能です。
社員(職員・従業員ではありません)は2名以上置く必要がありますが、理事は1名で構いません。監事の設置は任意です。
なお、社員と理事は兼任できますので2名以上の人(または法人)がいれば設立はできます。
NPO法人の場合は設立するには最低でも10名以上必要になりますから、こちらも大きな差になりますね。
また、理事は3名、監事も1名以上置く必要がありますので、賛同者集めに頭を悩ませる必要はありません。
株式会社については、1名で設立が可能です。
*参考ページ:一般社団法人設立に必要となる人数
メリット3.設立コストが安い
一般社団法人には資本金制度がありません。
株式会社のように株主もいませんし、出資という概念すらありません。
設立時に財産を出資する必要がありませんので、0円で設立できます。もちろん設立するための法定費用はかかります(公証役場での定款認証手数料や法務局での登録免許税で約11万円)。
それでも株式会社は法定費用だけでも約24万円かかりますから、大きな差です。NPO法人に関しては法定費用はかかりません。
*参考ページ:一般社団法人の運営費用(ランニングコスト)は?
メリット4.事業内容に制約がない
株式会社と同じように目的や事業内容に制約はなく、公益事業や共益事業(法人の会員に限定されている事業)、収益事業も行えます。
もちろん法に触れるような事業でないことが前提です。
NPO法人であれば活動範囲が法律に定められた20分野に特定されていますので、本来の事業に支障がない範囲でしか他の事業を行うことができません。
メリット5.収益事業以外は非課税になる
非営利型の要件を満たせば、収益事業から生じた所得以外は「非課税」になるという税法上の優遇を受けることができます。
これはNPO法人と同じ税制で、収益事業を行う場合はその事業にのみ課税され、収益事業を行わない場合は非課税です。つまり収益事業を全く行わなければ基本的には税金を納める必要がないという事になります。
メリット6.権利義務の主体となれる
法人名義で法律行為を行えるようになれます。
例えば、一般社団法人の名義で契約を行う、貸事務所を借りる、銀行口座を開く、不動産を所有する、自動車などの動産を所有するといった法律行為を行うことが可能になります。
任意団体の場合は、あくまでも権利義務の主体は団体名義ではなく当該任意団体の代表者等ですから、法律上の権利関係が曖昧になりがちです。財産の流用等、任意団体の私物化等が行われるのはこのためです。
メリット7.任意団体よりも社会的信用力がある
同じ事業を行っていても、やはり法人格を持たない任意団体では、信用面で劣ります。
任意団体の代表者に何かあった場合(病気や事故、死亡など)に、即取引がストップし、事業を畳まざるを得なくなる可能性もあるからです。
一方、一般社団法人には法人格がありますから、例え代表者に何かあった場合でも、事業は継続できるため、社会的な信用は上がります。
また、一般社団法人は法務局で登記されるため、登記簿謄本から法人の事業内容などが確認できるところも信用につながると考えられます。
*参考ページ:任意団体の一般社団法人化について
メリット8.公益性があると思われる
社団法人は元々公益性を持った法人であったため、現在でも一般社団法人=公益性があると思われることが多いです。
一般の方にはイメージ先行で、なんとなく公益性があるのだろうと思ってもらえる可能性があります(実情が伴っていなければメッキはすぐに剥がれますが)。
メリット9.基金や寄付金を集めやすい
一般社団法人には活動資金を確保するための手段として「基金制度」が設けられています。
株式会社は資本金を元手に事業を行いますが、一般社団法人にはそもそも資本金制度がありませんから、その活動資金をいかに確保するかが問題になります。
設立発起人が一般社団法人の運営に必要となる経費を負担するか、事業収入を確保するかしなければなりませんが、それだけは事業継続が困難となることも大いにあり得ます。
そこで、一般社団法人にも資金を調達しやすい制度が必要ではないかということで法整備されたのが基金制度です。
基金制度についての詳細は割愛しますが、詳しく知りたいという方はこちらも参考にしてください。
*参考ページ:一般社団法人の基金制度について/一般社団法人の寄付金収入について
メリット10.入会資格を限定することができる
一般社団法人は入会の条件を定めることができます。
例えば、「○○大学を卒業している者」「○○業を営む者」「○○の資格を保有している者」など、入会資格を一定の者に限定することができます。
協会ビジネス等も行いやすい業態と言えます。
NPO法人では、社員の資格として条件を設けることは原則として認められず、基本的には入会希望者を拒むことはできません。このため法人の意図しない者が入会する可能性もあります。
一般社団法人にはそのような制限はありませんので、法人の活動に適した会員を限定することができます。
メリット11.行政への報告義務がない
一般社団法人に監督庁はありません。ですので、行政からの活動の制約もなく、報告義務もありません。
NPO法人は所轄庁による監督制度がありますので、所轄庁によって指導・監督されます。事業年度終了後に事業報告等を提出する義務や名称を変更したり、事業目的を変更するにも事前に所轄庁の認証を受ける必要があるなど、様々な制約が課せられます。
以上が一般社団法人のメリットになります。
このように、一般社団法人には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。
ここからは、他の法人格には無い一般社団法人特有のデメリットについても見ていきたいと思います。
一般社団法人のデメリット
デメリット1.利益が出ても分配できない
一般社団法人は非営利法人であるため、事業活動を行って余剰利益が出た場合でも、社員に分配できません。
もしそのような定款の定めをしても無効です。
株式会社では利益が出ると株主に利益を配当することができます。株主からすると配当がもらえるため出資をするメリットもありますが、一般社団法人の社員にはそのようなメリットはありません。
デメリット2.面倒な書類作成が増える
毎年1回は社員が集まって定時社員総会を開催する必要があります。定時社員総会後に貸借対照表を公告したり、税務申告をしたり、役員の再任手続きを行ったりと法律に則った書類を作成し、保存しておく義務があります。
また、一般社団法人では事業内容や法人のタイプにあった会計基準を選択しなければならず、会計処理が煩雑になることもあります。
任意団体とは違い、法律で定められている事務作業が多く、運営の難しさを感じるかもしれません。
とは言え、株式会社でも、NPO法人でも、任意団体でも税務の申告は必ずしなければなりませんので、こちらの点については一般社団法人特有のデメリットと言うわけではありません。
*参考ページ:社員総会議事録について/一般社団法人の確定申告について
デメリット3.非営利型でなければ株式会社と変わらない
非営利型の要件を満たさなければ普通法人と同じ税区分になります。株式会社と同様にすべての事業について課税されます。
そもそも非営利型であっても収益事業には課税されますので誤解しないでください。
収益事業は全部で34種類あり、多くの事業が収益事業に該当します。つまり、医療や福祉、地域振興などごく限られた事業以外、実質的にはほぼすべての事業が課税対象だと言えます。
デメリット4.役員の登記手続きがある
一般社団法人では、理事の任期が最長で2年、監事の任期が最長で4年です。役員の任期が切れると同じ人が再任する場合でも法務局へ登記する必要があります。
最低2年に1度は役員再任の手続きに掛かる書類作成と登記手続きの登録免許税がかかることになります。株式会社では役員の任期は最長10年ですので、一般社団法人の方が煩雑になります。
*参考ページ:理事の重任・再任について
デメリット5.上場することはできない
一般社団法人は株式会社とは異なり、株式市場へ上場することはできません。
そのため将来事業を拡大し、より多くの利益を得たいと考えているのであれば、一般社団法人はむいていません。
そもそも一般社団法人は営利を目的としない非営利法人ですので儲けてそれを出資者に分配するという概念がありません。
資金が必要であれば本業で利益を出すか、「基金制度」を利用することになります。
なお、基金の拠出者は、株式会社の株主との立場とは全く異なりますので、当然ですが、利益分配を得ることはできず、議決権もありません。
基金についてはこちらのページも参考にしてください。
*参考ページ:一般社団法人の「基金」について/一般社団法人の資金調達について
こんな方には一般社団法人がおすすめ/他の法人格を検討したい方
ここまでメリット・デメリットを確認してきましたが、ご自身のケースでどの法人格が適しているか、判断材料として以下を参考にしてください。
◯ 一般社団法人が向いている方
- 業界団体・協会・スクール・資格認定団体など、会員制ビジネスを運営したい方
- 少人数(2〜十数名程度)で運営する小規模な法人を作りたい方
- 「営利のみを目的とした株式会社ではなく公益的なイメージを打ち出したい」方
- 任意団体・サークルで活動しているが、社会的信用力を高めたい方
- NPO法人に近い活動をしたいが、事業内容を柔軟に設計したい方
*あわせて読みたい:一般社団法人が使われやすい業種・業態は?
△ 株式会社・合同会社が向いている方
- 事業を拡大して株主・出資者に利益を分配したい方
- 将来的に上場や大規模な資金調達を視野に入れている方
- 「営利目的を明確に打ち出した方が事業上有利」と判断される方
△ NPO法人が向いている方
- 活動分野がNPO法の20分野(保健・医療・福祉・環境・人権・国際協力等)に該当する方
- 寄付金収入をメインの財源にしたい方(認定NPO法人になれば寄付者の税制優遇あり)
- 10名以上の賛同者・社員を集められる方
- 所轄庁への報告など、行政手続の負担を許容できる方
判断に迷われる場合は、設立前に専門家への相談をおすすめいたします。法人格の選択段階からのご相談も、お問い合わせフォームより承っております。
まとめ
以上、一般社団法人のメリット・デメリットを見てきました。
一般社団法人は行政庁の監督もなく、登記申請のみで簡単に設立ができます。
公益性が高そうなイメージがありますが、実際は事業内容に制約もなく、営利性のある事業だけを行っている法人も多くあります。
一般社団法人は「非営利法人」ですが、非営利法人とは法人の社員に利益の配当をしない法人のことであって、利益を出してはいけないということではありません。
株式会社と同じような事業を行っても構いませんし、役員報酬や従業員に給与を支払うこともできます。
このようにメリットは多いですが、デメリットも見逃してはいけません。
一般社団法人の設立を考える際には、本当に一般社団法人がいいのか、個人や任意団体のままの方がいいのか、あるいは株式会社や合同会社など普通の法人の方が良いのかを考えるとともに、一般社団法人特有のメリット・デメリットを踏まえた総合的な判断が必要になります。
一般社団法人の設立を検討していて、さらに踏み込んだ内容を確認したい、どの法人格が良いのか専門家の意見を聞いてみたいという方は、お問い合わせフォームよりお気軽にご相談ください。
一般社団法人のメリット・デメリットに関するよくあるご質問(FAQ)
一般社団法人を設立する一番のメリットは何ですか?
状況によって異なりますが、特に多く挙げられるのは「少人数(最低2名)で設立できる」「事業内容の制約がない」「設立コストが約11万円と株式会社の半額以下」「任意団体よりも社会的信用力を得やすい」という4点です。
非営利型の要件を満たせば、収益事業以外の所得が非課税となる税制上の優遇も受けられます。
一般社団法人のデメリットで特に注意すべき点は何ですか?
主なデメリットは、利益を社員に分配できないこと、理事の任期が最長2年で再任のたびに登記手続きが必要になること、毎年の社員総会開催や議事録作成・保存などの運営事務が法律で定められていることです。
特に役員任期に伴う登記懈怠は過料の対象となるため、設立後の運営面を見据えて準備を進めることが重要です。
一般社団法人と株式会社、どちらを選ぶべきですか?
事業目的によります。利益を出資者に分配したい・将来的に上場を視野に入れる場合は株式会社が向いています。
一方、業界団体・協会・スクール運営など会員制ビジネス、または公益性のあるイメージを打ち出したい場合は一般社団法人が適しています。設立コスト・必要人数の面では一般社団法人の方が小規模でも始めやすい特徴があります。
一般社団法人とNPO法人の主な違いは何ですか?
主な違いは3点です。①設立に必要な人数(一般社団法人は2名、NPO法人は10名以上)、②設立手続き(一般社団法人は登記のみで約3〜4週間、NPO法人は所轄庁の認証が必要で約4〜6か月)、③事業内容の制約(一般社団法人は原則自由、NPO法人は法定の20分野に限定)。
寄付金収入を主たる財源とする活動であればNPO法人の選択肢もありますが、それ以外の用途では一般社団法人の方が運営の自由度が高くなります。
一般社団法人は利益を出しても良いのですか?
はい。一般社団法人は「非営利法人」ですが、これは利益を社員に分配しないという意味であり、利益を出すこと自体は問題ありません。
株式会社と同様に収益事業を行うこともでき、得られた利益は法人内に留保して翌期以降の事業活動や設備投資、役員報酬・従業員給与の支払いなどに充てることができます。
一般社団法人の役員に報酬を支払うことはできますか?
はい、可能です。理事・監事などの役員に対して報酬を支払うことができます。
ただし、役員報酬の額は定款の定め、または社員総会の決議によって決定する必要があります。また、非営利型の要件を維持するためには、特定の役員等への報酬・分配が過度に偏らないようご留意ください。
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